Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

山本政志 脳天映画祭

昨年も今年も映画界は大混乱だが、それでも2020年は、予想を超えた瞠目の日本映画があちこちに出現していた。コロナ状況の割りを食って正当に遇されなかった映画がいくつもあるが、そのひとつが山本政志の『脳天パラダイス』ではないか。なんでコーヒー豆が怪獣になるんだよ、なんで男の子が木の枝に化けるんだよ、とかいうツッコミを入れる暇もなく、観客は怒涛の寄り切りで土俵を割ってしまう。 そこへこの6月、山本政志監督特集が新宿に見参と相成った。カルト・オブ・カルトな『闇のカーニバル』や『ロビンソンの庭』には、人は黙っていても駆けつけるだろう。しかし驚くのは、汎アジア馬鹿祭り映画『てなもんやコネクション』も、公開からもう30年が経っていたことだ。もしこれをいま観直したら、2021年の日本映画とこの国の空気に何が欠けているのかが、瞬間的に分かってしまう気がする。 以上のレジェンド作品は劇場にせっせと通うとして、実は、もう一つの筆者のおすすめは『聴かれた女』。盗聴される女と盗聴する男のサスペンス以上に、低予算コメディ作家としての山本監督の新たな手腕が光る。まるで観たことのない初期の自主作品もお目見えらしく、世知辛すぎて滅入るばかりのアンダーコロナ型脳みそをほぐすいい機会になりそうだ。

21/6/16(水)

アプリで読む