絶対に見逃せない一本。シンプルな男と女の愛の物語に、人が背負っている複雑なものが全部うつっている。歌になってきこえてくる。 冷戦に揺れるポーランドから始まる、15年にわたる物語。自由を求めってパリに逃げたピアニストの男と、祖国の音楽舞踊団の名花となった女。ふたりは、求め合い、ぶつかり合い、離れては、また求め合う。その激しいラブストーリーは、いつしか、人間と祖国の関係にも重なってみえてくる。 大きな役割を果たすのは民族の歌だ。転変するふたりの人生とともにある、その歌、なんという強度だろう。音楽も、光と影が綾なすモノクロームの映像も、その中に存在する人間も――。女の体の肉づきが転変を経てさりげなく変わっているのも、すごい。

19/6/24(月)