彼は「夜」。陽のあたる場所に焦がれている。 建設会社に勤めるジョナサンは、朝7時に起きて夜7時に就寝する。夜7時からはジョンの時間だから。そう、彼は二重人格で、互いになんとか折り合いをつけて、これまで仲の良い兄弟のように暮らしてきた。ある女性と出会うまでは。 アンセル・エルゴートが二重人格の青年に挑戦し、二人の青年それぞれの魅力が伝わる。監督は本作が長編デビューとなるビル・オリバー。 乖離性同一性障害(多重人格)モノは、「もしかして多重人格なのか」「事件を起こしたのは他の人格か否か」 に焦点が当たりやすいが、本作は二重人格であるということはすでに分かっていて、彼らの“均衡”についてが物語の要となる。 人は嘘をつく生き物だという。だとすれば、彼らも例外ではない。語られる話は本当に真実なのか。彼はそもそも彼なのか。 観客の想像力こそが、この物語をさらに深く面白くさせる。解釈によってこの物語もまた、いくつかの表情を覗かせるのだ。

19/6/20(木)