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水先案内人のおすすめ

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一度逃したら再び観る機会がないかもしれない、ちいさな芝居を中心に

釣木 文恵

演劇ライター

関田育子 『浜梨』

以前、この欄でも紹介した〈どらま館ショーケース2019〉。若手の団体3組が短編作品を上映するこの公演で『柊魚』という30分ほどの作品を上演したのが関田育子だった。 演劇は、なにもないところになにかを見出させる。たとえば舞台上の人物が胸のあたりの高さでなにかの手すりを掴むような動きをしたら、それは橋の欄干かもしれないし、ベッドのへりかもしれない。観客はとくに意識せずとも、セリフやそれまでの流れから自然とその状況を理解し、そこに作品が描こうとしている景色を見る。 その不確かさを改めて意識させるのが、関田育子の演劇だ。セリフもある、物語の展開もある、見ているうちに関係性も浮かび上がってくる。けれど、登場人物が手すりをつかむ動きをしたとき、それが一体何なのかは、ひと呼吸、ふた呼吸、時にはしばらくたたないと明確にはならない。そこでふと、見ている物語からの距離が生まれる。それが決して嫌な気分ではなく、「演劇を見る」ことの面白さを再確認させられるような気持ちになるのだ。 関田育子は1995年生まれ。〈マレビトの会〉のプロジェクト・メンバーでもあるという。この若さの演出家が面白い作品をコンスタントに発表しているということ自体、とてもうれしいできごとだ。

19/5/30(木)

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