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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

めまい 窓越しの想い

人の出会いはいつもドラマチックですが、本作の場合も「衝撃の」と言わざるを得ないでしょう。ヒロインのソヨンは人事権をちらつかせる同僚から休日の高層オフィスビル内でセクハラをされそうになります。きっぱり拒絶しましたが逆に顔を殴られ床に倒れてしまいます。襲い掛かる同僚ともみ合ううちにオフィスの外でロープにぶら下がりながら窓ガラスを清掃中の青年グァヌとガラス越しに目が合うのです。彼は別の日にたまたま見かけたソヨンに好意を抱いていましたので彼女を助けようと激しく窓ガラスをたたき続けます。それこそ窓が割れてしまうかもしれないほどに強く強く。その必死さが功を奏したのでしょうか。同僚は慌てて立ち去りました。 実はソヨンは誰にも打ち明けられない社内恋愛を抱えていました。また契約社員としての手続きを更新する時期を迎え同僚たちの視線が気になります。そこへセクハラにパワハラですから、うつうつとすることがさぞかし多かったことでしょう。そんな彼女に訪れたやっと心安らぐ出会いです。それがありふれた出会いではなんだか納得できないですよね。衝撃の出会いに続く物語の結末は絶望、それとも希望でしょうか。 そういえば中国映画『ロスト・イン・北京』(リー・ユ−監督、2007年)でもビルの窓ふき清掃人が作業中に妻がレイプされるのを目撃してしまうというショッキングな場面がありました。経済成長一本やりの社会を泥臭く批判する同作品と比べると本作は紛れもない純愛物語といえるでしょう。

21/4/29(木)

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