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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

シリアにて

戦火が絶えないシリアで、死におびえながら暮らす家族の1日を描いた緊迫感あふれる人間ドラマだ。 舞台は首都ダマスカスのアパートの一室。屋外では戦闘が続いており、歩けば狙撃される危険があった。そんな状況下、部屋の女主人ウンム・ヤザン(ヒアム・アッバス)は家族を守るため、息をひそめて生活を送っていた。夫は戦地に出て不在。近く出国するという隣人一家も身を寄せ、部屋ではメイドも含め10人が暮らしている。朝、隣人一家の夫が外に出たところ、狙撃手に撃たれ、倒れてしまう。昼には男2人が押し入ってきた。ウンム・ヤザンは家族らとキッチンに隠れるが、隣人の妻ハリマは赤ん坊とともに見つかってしまう。 カメラが屋外に出るのはわずかなシーンだけ。銃撃など外からの音や人々の不安な表情、反応で物語を紡ぐ演出が秀逸だ。室内に限定した映画は過去にもある。アルフレッド・ヒッチコック監督『ロープ』、エットーレ・スコラ監督『特別な一日』、川島雄三監督『しとやかな獣』の3作は映画史に残る傑作なのでぜひ観比べてほしい。ただ、本作が異なるのは、室内の人間模様を見せながら外で起きている出来事を強く想像させる点。密室から世界が見える作品だ。

20/8/18(火)

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