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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

コリーニ事件

弁護士でありベストセラー作家でもあるドイツ人フェルディナント・フォン・シーラッハのデビュー作『犯罪』を、大変に面白く読んだ記憶がある。(本屋大賞「翻訳小説部門」第1位) だが、本作の原作となった初の長編小説『コリーニ事件』は未読で、映画を観て原作もさぞ傑作だろうとスルーしたことを少し後悔している。 物語の舞台は2001年のドイツ。新人弁護士カスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)のもとに、殺人犯の国選弁護人の仕事が舞い込んでくる。弁護することになった被疑者は、30年以上にわたり、ドイツで模範市民として暮らしてきたイタリア人コリーニ(フランコ・ネロ)。彼はベルリンのホテルで、経済界の大物実業家ハンス・マイヤーを殺害した罪で起訴されていた。 カスパーは沈黙を守る被告人コリーニにしびれを切らせ、その動機を調べていくうちにドイツの"不都合な歴史"にたどり着く、というサスペンス仕立ての法廷ドラマ。 その"不都合な歴史"というのが、もの凄い。 1968年に「秩序違反法に関する施行法」(ドレ―アー法)という法律がドイツ連邦議会で可決された。これはすべてのナチス犯罪者は訴追を免れることを保証した法律で、何万人もの戦犯者が命拾いをする。 ネタバレになるので書けないが、ラストで「第三帝国の悪の本質はヒトラーやホロコーストだけではなかった」ことが明かされる。 監督は『クラバート 闇の魔法学校』などのマルコ・クロイツパイントナー。こんな凄い映画をつくってしまうドイツ映画、総毛立つようなラストシーンだ。近年屈指の名作としておススメしたい。

20/6/8(月)

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