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夏目 深雪
著述・編集業
すばらしき世界
21/2/11(木)
TOHOシネマズ日比谷
佐木隆三の原作を、西川美和監督が映画化。幼少期に母親に捨てられ喧嘩っ早い性格で、殺人の罪により長く収監されていた三上が出所。三上は久々のシャバに馴染めないが……。 三上に役所広司、役所について書こうとする青年に仲野太賀と配役が的確で素晴らしい。オリジナルを多く撮ってきた西川監督だが、原作へのリスペクトからか持ち味の意地悪な視点は封印され、真摯なタッチに徹している。ヤクザが生きにくい昨今の世相やメディアの問題なども取り入れ、不穏なことが起きそうな緊張感で満ち、全編目を離せない。ラストシーンはタイトルへの皮肉が強烈で茫然自失。同じ佐木の原作の『復讐するは我にあり』や『海燕ジョーの奇跡』を見直したくなった。
21/2/10(水)