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三鷹市芸術文化センターで、演劇・落語・映画・狂言公演の企画運営に従事しています

森元 隆樹

(公財)三鷹市スポーツと文化財団 副主幹/演劇企画員

鵺的『悪魔を汚せ』

手にしたチラシに「鵺的旗揚げ十周年記念公演」と書かれていて、少しだけ戸惑った。鵺的の主宰であり、すべての作品で脚本を担ってきた高木登が描き出す世界は常に芯がしっかりとしていて、それゆえ一作一作の手応えが重く、少なくとも十五年や二十年は演劇の世界に根を張ってきた劇団のように思えてならなかったからだ。確かに、高木自身は、遡ること20年前、1999年12月から劇団「机上風景」の旗揚げに参加し、2007年6月に退団するまで座付作家として数々の作品を生み出していたから、その影が作家としての時間の奥行きを錯覚させているのかもしれないが、鵺的の旗揚げは2009年であるから、確かに今年が十周年である。セリフの切れ味は旗揚げ当初から研ぐだけ研がれていて、時に切れ味が良すぎるが故に、普通の生活では余り食べたことも無い部位まで、生のまま観客に提示され、新鮮だとはわかっているけれど、口に運び咀嚼するには些か(いささか)躊躇われるほど、高木の筆は、鬼のような才を宿してきた。 その、高木が主宰する鵺的が、十周年に選んだ記念公演は、『悪魔を汚せ』。 その再演が示す、鵺的の現在地を、しっかりと堪能したい。

19/8/30(金)

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