これは興奮！これは泣ける！音楽にもう一度夢を持てるかも？なかなかない感激かもしれない。 ブルース・スプリングスティーンが好きな英国青年の話というと「ブルース、そんなに好きじゃないんだよな」で終わるかも？という貴方。僕も実は、嫌いじゃないんだけど、ベストじゃないんだよっていう人でした。 そういうの関係ない。音楽が好きな人なら絶対感動できます。ひょっとしたら音楽好きじゃなくても……。 主人公のお父さんも、全く興味なかったのに「ブルース・スプリングスティーンはパキスタン人の心を持っている」と、惹かれていくのだ。 そう、この話が面白いのは、普通にある白人の話ではなく、在英国パキスタン人の話だから。しかも驚くべき結末なのだ。最後に、ほう？という写真が出てくる。 我々には絶対に触れる機会のない、英国のパキスタン移民の家庭、そこでは苦闘した移民ならではの営みがある。色々映画見てきたが、インド系移民の話は初めてだ。しかも描写が丁寧で、台所の匂いが香ってくるよう。 そして人種を超えて心に入っていくブルースの歌詞が凄い！ブルースの訳詞は読んできたつもりだったが、全く新しい感動で涙が止まらない。リズムに合わせて字幕が飛び込む訳詞も素晴らしい。今まで聴いてきたロックのモチベーションを凌いで、なぜブルースの歌が労働階級に訴えるのか？保守、革新を問わずに支持されるのか？という理由がしみじみ胸に突き刺さる。ビートルズやストーンズ、ディランとは全く違う感動なのである。 そして1980年代を再現した街、学校、描写が精密で、本当に素晴らしい。ニューウェイヴ時代だった当時の英国の大学の生き生きとしたキャンパスライフの描写には、彼らの髪型、服装、音楽とも、キラキラしていて、そこに入っていきたいほど！ ヒロイン、ミス・グレイ役のヘイリー・アトウェルが生意気に可愛くて、ああ、こういう子、日本のバンドブーム時にもいたなあ、と共感しきり。 というわけで、音楽知る人知らぬ人、80年代知る人知らぬ人、ブルース知る人知らぬ人、万人にお勧めする感動の一作です。

20/7/14(火)