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音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています
佐々木 俊尚
1961年生まれ フリージャーナリスト
カセットテープ・ダイアリーズ
20/7/3(金)
TOHOシネマズ シャンテ
1987年のイギリス田舎町を舞台に、ブルース・スプリングスティーンの音楽に熱狂するパキスタン移民の男子高校生を描く。楽曲の出し方がカッコよくて、近年つぎつぎと傑作が誕生している音楽映画シーンに、またひとつ素晴らしいニューカマーが現れた。 ブルース・スプリングスティーンの最盛期は1970年代後半から80年代前半。最初の大ヒット曲『明日なき暴走』は1975年、『ハングリー・ハート』1980年、『ダンシン・イン・ザ・ダーク』1984年。だから87年に主人公が彼の音楽を聴いてるってのはちょっと古くて、実際物語の中でも学校放送のイケてるDJ少年に「ブルース・スプリングスティーンなんて僕らの父親たちが聴いてる音楽だろう」と言われるシーンが出てくる。でもこのちょっとズレてる感がすごく親近感を誘い、「ダサくても頑張ろう」というような共感が生まれている。 サッチャー首相による新自由主義政策や移民差別の激化などの社会背景もきちんと描きこまれていて、非常に良い作品です。
20/6/30(火)