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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

キューブリックに魅せられた男

『キューブリックに愛された男』『キューブリックに魅せられた男』 11/1同時公開。 日本ではカップリング上映されるが、もともとは異なる監督による、別々に製作されたもので、同時上映される意図はなく作られた。したがって、相互には何も関連しない。 キューブリックがどう映画を作っていたかは『魅せられた男』でよく分かる。完璧主義はよく知られているが、撮影とポストプロダクションのみならず、全世界へ配給されるフィルムのプリント、ビデオ化された時のパッケージにいたるまで、すべてをコントロールしているのは、驚くやら呆れるやら。映画に「完成」はないと、よく分かる。 『愛された男』ではキューブリックの「人間」としての「生活」が語られる。 『愛された男』の主人公は『時計じかけのオレンジ』から、『魅せられた男』の主人公は『バリー・リンドン』から、ずっとキューブリックのそばにいた。したがって、2人はきわめて近くにいたはずなのに、どちらの映画にも、「もうひとりの男」は出てこない。2作を続けて観ると、この不思議さが印象に残る。 その意味で、何の関係もなかった2作のカップリング上映は、それぞれの映画の製作者が思いもしない効果をもたらし、キューブリックの巨大さと深さを、語らずして語る。 配給会社の企画力の勝利だ。

19/10/29(火)

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