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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

シリアにて

戦争の衝撃的なシーンを売り物にするかのような大作が量産される中、本作は逆に戦闘場面を極力排除し、音と住人の心理描写を通じて戦争の怖さやむごたらしさをリアルに描くことに成功しています。 舞台は内戦の続くシリア。夫の留守を預かる気丈なオームは、家族と共にアパートの一室にこもり、そこに幼子を持つハリマ夫婦が身を寄せます。ある日、ハリマの夫がレバノンへの脱出手続きをするためアパートを出た途端、スナイパーに撃たれ倒れてしまいます。目撃したメイドのデルハンはオームに知らせますが、オームは彼を助けようとはせず、他言無用を命じます。とっさの判断には彼女なりの理由があるのでしょう。 普段なら何も怖くないはずの玄関ドアには簡単に押し開けられないよう太い角材2本が固定されています。その頑丈なドアを見ると、開けられるはずのないドアが無情にも開いてしまうのではないかという恐怖感に一瞬ですがとらわれます。そして実際にドアは開けられ、理不尽な暴力が起きてしまいます。そこがフィリップ・ヴァン・レウ監督の脚本の怖さでしょう。 アサド政権と反体制派、さらにISとクルド人勢力まで巻き込んだ内戦。死と隣り合わせの日常を主に女性2人の目線で描く、生き残るための密室劇です。

20/8/21(金)

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