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水先案内人のおすすめ

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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

シチリアーノ 裏切りの美学

昨年の第72回カンヌ国際映画祭のプログラムはエキサイティングだった。アルモドバル監督『ペイン・アンド・グローリー』、ケン・ローチ監督『家族を想うとき』、ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』、クエンティン・タランティーノ監督『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、ジム・ジャームッシュ監督『デッド・ドント・ダイ』などなど、一騎当千の監督たちが覇を競ったからだ。 その中にあって、いぶし銀の風合いを感じさせたのが81歳のマルコ・ベロッキオ監督作品『シチリアーノ 裏切りの美学』。 パルムドールは『パラサイト』が受賞、残念ながらベロッキオ作品は無冠に終ったが、『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』『甘き人生』などのイタリア映画界最後の巨匠ベロッキオ監督の健在ぶりが嬉しかった。 本作はタイトルからも分かるように、今ではほとんど作られなくなった“マフィア物”、シシリアン・マフィアたちの覇権抗争と裏切りの物語だ。 1980年代初頭のイタリア。マフィアの争いが激しさを増すなか、パレルモ派の大物であるブシェッタ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)はブラジルに逃走。祖国に残された家族や仲間はコルレオーネ派に報復され、ブシェッタも逮捕されてイタリアに引き渡される。帰国したブシェッタにマフィアの撲滅を目指すファルコーネ判事(ファウスト・ルッソ・アレシ)が協力を依頼。麻薬取引と殺人が横行する犯罪組織コーザ・ノストラに幻滅していたブシェッタは、判事への協力を決意する。しかしそれは、コーザ・ノストラの ”血の掟” に背く行為だった……。 映画の前半はマフィア同士の抗争劇、後半は法廷劇に転じる単純な構成が弱点だが、マフィア撲滅へのベロッキオ監督の執念が伝わってくる。 最大の見どころは後半の裁判シーン。証人席を囲む檻のような小部屋がいくつもあり、その中に収監されている被告人たちが勝手気ままに大声を張り上げる法廷シーン。騒然、というよりもヤジが行き交う罵り合いで、これがイタリアの法廷なのかと驚かされる。 イタリアのアカデミー賞ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最多6部門を受賞。『ライフ・イズ・ビューティフル』でアカデミー賞を受賞したニコラ・ピオヴァー二が音楽を担当している。

20/8/26(水)

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