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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

象は静かに座っている

上映時間234分。画面は薄暗く、会話も心弾む内容には程遠く自己弁護や相手の非難ばかり。それなのに見続けてしまうのはなぜなのでしょうか。そこには現代人が抱えている不安や悲しみ、あるいは疑心といったものがしっかりと描かれているからだと思います。 舞台は中国の田舎町。少年のブーはイジメにあう友達をかばったため誤って不良の同級生を階段から突き落としてしまいます。その不良の兄のチェンは弟が死んだためブーを捜す一方、自身は親友を自殺に追い込んだことで自責の念に駆られます。ブーの女友達のリンは教師との不倫が学校中に知れ渡り行き場を失います。そしてブーの近所に住む老齢のジンは娘夫婦から老人ホームへの入居を持ち出されます。 もう気の滅入るお話ばかり。それでもカメラの目線は4人を見捨てず、むしろ愛おしさを感じているようです。そんなどん底状況でも彼らが真剣に生きているからに違いありません。やがてバラバラだった彼らが共に向かい出すのは2300km先の国境の町満州里。そこに希望があると信じて……。 監督のフー・ボーは映画の完成直後、自らの意志でこの世を去りました。29歳の若さでした。ああ惜しい! いまこそ見るべき作品にやっと出会えたというのに。

19/10/31(木)

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