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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

CURED キュアード

新型コロナウィルスの恐怖に脅かされている“今”この映画を観ると、悲しいかな、人間の愚かさに気づかされてしまうのです。 ジョージ・A・ロメロのゾンビに敬意を払いつつ、ダニー・ボイル監督の『28日後…』で描いた近親者の感染に光を当て、韓国映画『 新感染 ファイナル・エクスプレス』のように生きるために戦いを挑み、熱量高く問いをぶつけてくる新感覚。 何がすごいかって、主人公は治療して回復したゾンビ経験者の男性。 舞台は、ゾンビたちの攻撃が沈静化した社会で、治療により人間に戻れた人たちを恐れ、締め出そうとする人多数、かたや家族だからと受け入れようとする人、さらには、治療しても効果が現れないゾンビ化している人たちを安楽死させようとする社会。そんな中、たったひとり、諦めずにゾンビが人間に戻る治療薬への開発を続ける女性研究者。 ゾンビだった頃の記憶に悩まされ、罪に苦しむ彼らを迫害しようとする社会は残酷で、自分の中の正義を振りかざし、「回復したと言えども、人を殺した彼らを許すわけにはいかない。隔離しよ! 社会復帰なんてできるわけがない」と叫ぶ人の姿も。 正義とはなんなのか? 怪物はどちらなのか? あなたの子供が感染しても社会から締め出すのか?という問い。 アイルランドの新人監督デイヴィッド・フレインが疑問に思った社会の間違った正義に対する宣戦布告のような脚本は、胸の真ん中に刺さったまんま外れない。 自分は被害者側(感染していない者)だから、恐怖から少しでも逃れるためにも加害者(感染の影響で人を殺すという罪を犯した者)は危険だし、何をするか分からないから排除すべし、という考えのほうがモンスターではないか? これはクリント・イーストウッド監督の『リチャード・ジュエル』とある意味同じメッセージを持っていて、自分勝手な正義を振りかざし、人の心を傷つけてしまうことこそ、怪物化しているのでは?という警告。ホアキン・フェニックスがオスカー受賞時に紹介した故リヴァー・フェニックスの詩“走って救いに行け。そうすれば愛と平和がついてくる”のように、過ちを悔いている人を社会から遮断せず、一緒に救える世界を願い。

20/3/16(月)

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