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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
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注目されにくい小品佳作や、インディーズも

吉田 伊知郎

1978年生まれ 映画評論家

長門裕之 -Natural Born 銀幕俳優

『麻薬3号』(8/1〜8/7 ) ラピュタ阿佐ケ谷「長門裕之 -Natural Born 銀幕俳優」(8/1〜9/25)で上映 神戸を舞台にした映画は数多いが、3本を選べと言われたら絶対に入れたいのが、1958年の神戸をムードたっぷりに映し出した古川卓巳監督の傑作ノワール『麻薬3号』だ。 裏の世界に顔が利く長門裕之を頼って、ある男を探して欲しいと南田洋子がやって来る。心当たりの場所を案内するが男は見つからず、やがてふたりは通じ合う。欲望と闇が渦巻く世界を、モノクロのシネマスコープと丹念なロケで映し出し、戦後の猥雑さがまだ色濃く残る三宮駅前や、現在も当時の雰囲気を残す国鉄高架下などが絶妙な舞台装置となって盛り上げる。 タイトルはヘロインを指し、都市に沈殿する闇の世界の恐怖が見事に描かれている。また山と市街地と海が隣接する神戸の特色が鮮やかな舞台転換を可能にし、モダンな教会などの近代建築も彩りを加える。山の中腹にあるホテルが登場するが、これが摩耶山の山中に朽ち果てた姿で現存する摩耶観光ホテルである。今では日本有数の有名廃墟となり、数々の映画やテレビドラマでもロケされてきたが、本作ではまだホテルとして営業されていた時代が見られるのも貴重。終盤の須磨の海岸から教会へ至る場面は何度観ても息を呑む。未ソフト化。

21/7/28(水)

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