Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

トルーマン・カポーティ 真実のテープ

2005年の『カポーティ』は、この作家の大きな転機となる『冷血』の取材と執筆の過程を描いた劇映画だったが、今回の『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』は生涯全体を描く、ドキュメンタリー映画。 伝記映画はその人物についてある程度の予備知識があった方が理解できるが、この映画は、「カポーティはオードリーの『ティファニーで朝食を』の原作者」としか知らない人でも充分に面白いと思う。 身長が低く、同性愛者という、二重のマイノリティーであることが強調されているのは、いまの世の中の反映だろうか。 カポーティは映像に撮られるのが好きだったようで、テレビのトーク番組にも何度も出ており、そういう彼自身の映像もふんだんに使われている。映像の中のカポーティは本人なのだから「真実の姿」のはずなのだが、そこに虚構性を感じてしまう。「カポーティを演じているカポーティ」がそこにいるのだ。では、「真実のカポーティ」が、親しい人たちの証言のなかにあるかというと、彼らも、「カポーティを演じているカポーティ」しか知らない。彼の小説の文章が、あたかも彼の真実の声であるかのように引用される。 ドキュメンタリー映画のはずなのに、劇映画を観たような印象になる。そして、彼の生涯全体を描いた劇映画を観たくなる。

20/11/2(月)

アプリで読む