蜂蜜と人類のかかわりはかなり古くからあり、採蜜は1万年以上も前から知られていたという。今日では自然と共生した養蜂を受け継ぐ人は珍しいが、そんな自然養蜂家の女性を描いたドキュメンタリーだ。北マケドニアの首都スコピエに近い山間の谷で病気のため寝たきりの老母と暮らしながら、彼女は採取した純度の高い蜂蜜を都会の市場で売って貧しい生活を維持している。そんな彼女の姿を長期取材による透明感に満ちた何とも美しい映像を通して描きつつ、隣人による採蜜の乱獲など、自然と共生する現代社会の難しさを浮き彫りにする。やがて老母が亡くなり、孤独になった彼女が昔ながらの自然養蜂を守り続けて美しい山間をめぐる姿には、人間の営みの危機による哀しみが漂っていて何とも切ない。

20/6/25(木)