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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ

空を飛んでいる夢って見ませんか。「いままで一度も見たことがない」と言う人もいるので、そういう人はちょっと可哀そうだなと思ったりしていました。でもこの作品を見てびっくりです。空をゆっくりと浮遊している時の足元の心もとない感覚が見事に描かれていたからです。 どの場面かと言えば、後半のパートで3D映像による60分ノーカット映像が始まって間もなく。ミャオ族の女たちによる愛の歌が流れる中を、イルミネーションに彩られた小さな街へと主人公がリフトに乗りゆっくりと下に降りていくシーン。いまや望めば空を飛んだり浮遊する体験をリアルに映画で味わうことができるのです。 これまで3D映像を使った監督は多数に上りますが、ビー・ガン監督のように、「この技術を使えば映像が立体的に見え、それがかえって偽物っぽく見える特性があり、ちょうど主人公が夢を見ている感覚を表わすのにぴったりだった」と効果に熟達した上で映画に取り入れた監督はいなかったのではないでしょうか。映画は何でもできるということを改めて考えさせる作品です。 その一方、本作は分かりにくい作品です。一昨年の東京フィルメックスでの初見に続き今回の試写で2回目。それでも完全に理解できたとは思えません。主人公のルオが現実と記憶、さらに夢を行き来しつつ、忘れられない女性を求めてさ迷い歩く物語。その点では間違いなくラブストーリーですが、監督はジャンル分けを嫌がるようです。説明的なシーンがないので観客は想像力を強くせざるを得ません。自分なりの解釈を楽しむいい機会かもしれませんね。 タン・ウェイ、シルヴィア・チャンら豪華キャストを長回しの3D撮影のために何度も同じ演技をさせ何日も拘束したという監督の若き才能と度胸の大きさにも感心しています。前作の『凱里ブルース』で世界に認められたからこその演出です。この才能が次にどこへ向かうのか、もう今から待ち遠しいです。

20/2/25(火)

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