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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

今宵、212号室で

「20年前の、若き日の夫が現れる」というファンタジー設定を受け入れられなければ、こういう映画は楽しめない。登場人物たちはこの過去からの侵入者に最初は驚くが、謎の解明なんて野暮なことはしないで、自然に受け入れる。 妄想なのか、何らかの時空の歪みによる事象なのか、そんなことはどうでもいい、という前提で物語は進む。 夫婦が妻の浮気の発覚で危機的状況に陥るところから始まる、深刻な物語。しかし、明るいというか、コミカルというか、湿っぽくはならない。「フランスらしい」というしかない、ユーモアとエスプリに満ちた映画。 一夜だけの物語。舞台となるのも、道を隔てたマンションとホテルの一室と限られているので、舞台劇のようだ。当然、俳優たちの演技力が問われ、キアラ・マストロヤンニを見る映画でもある。 キアラは『アンティークの祝祭』では母カトリーヌ・ドヌーヴと母娘の役で共演していたが、この映画では元・夫バンジャマン・ビオレと離婚寸前の夫婦の役を演じている。フランスでは、こういう俳優の実人生と重なるキャスティングが、はやっているのだろうか。

20/6/16(火)

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