2017年2月13日に、マレーシアの首都クアラルンプール国際空港で起きた事件は、国際社会を震撼させた。北朝鮮の最高指導者、金正恩の実兄、金正男が、一滴でも死をもたらす神経剤VFXを顔に塗られ、暗殺されたのだ。数日後、ベトナム人とインドネシア人のふたりの女性が、実行犯として逮捕される。 この実話、事件以前に仮に劇映画の脚本として提出されたら、あまりに荒唐無稽と却下されただろうが、現実に起きてしまったのだから恐ろしい。『おしえて！ドクター・ルース』(19)のライアン・ホワイト監督は、ふたりの無邪気な女性が、巧妙かつ入念な手口で、暗殺の実行犯にされていく過程を丹念に検証していく。悪夢のような事件の裏側で、いったい何が起きていたのか。国際社会の闇に大胆にメスを入れる。このドキュメンタリーは、なまじっかのホラーより、よっぽど恐い。

20/10/8(木)