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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

生誕90年記念 昭和の怪優 小沢昭一のすゝめ

『ブラック・コメディああ!馬鹿』9/7〜9/13 神保町シアター 特集「生誕90年記念 昭和の怪優 小沢昭一のすゝめ」(9/7〜10/4)で上映。 “昭和の怪優”といえば、三國連太郎、フランキー堺、伊藤雄之助が思い浮かぶが、小沢昭一もそのひとり。小沢は川島雄三、今村昌平、浦山桐郎ら異能の監督たちに愛され、エロ事師、大学生、サラリーマン、在日二世など様々な役柄を変幻自在に演じた。 『ブラック・コメディああ!馬鹿』で、小沢は『痴人の愛』でナオミに翻弄される河合譲治と少し似ている、冴えないサラリーマンを演じている。監督は『野獣死すべし』『君も出世ができる』などアクションからミュージカルまでどんなジャンルをもこなした須川栄三。 小沢扮する係長の赤沢が結婚を申し込んでふられたタイピストは重役の2号。この娘がとんだ食わせ者で、パトロンの目を盗んで大学生と浮気をしたり睡眠薬で狂言自殺をはかったり。結局、赤沢は彼女を押しつけられこの厄介者の処理に奔走する……というお話。 睡眠薬で眠った娘を抱えて夜の街を彷徨うシーンは、まさにブラックな不条理劇で小沢の独壇場。 原作はリチャード・スティガーとあるが、「これは監督の須川栄三の変名だろう」と指摘するのは大衆文化評論家の指田文夫氏。その根拠は須川監督の最初の妻で女優の清水谷薫が、大量の睡眠薬を服用して急死、それが映画のシーンに取り入れられているからだという。 そのときのことを映画仲間だった白坂依志夫氏が次のように書いている。 「葬式にかけつけると、誇大妄想癖が少しあった寺山修司が私の横にいてささやいた。“須川の奴、モテ余して殺したんだよ。あの奥さんを”」(『脚本家白坂依志夫の世界』シナリオ6月号別冊) 『ブラック・コメディああ!馬鹿』はミステリアスで不気味なシーンが多い映画なのだ。

19/9/5(木)

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