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日本で(多分)一番多くの映画を観る(年間800本!=新作、旧作も入れると…)映画評論家
野村 正昭
映画評論家
ベイビーティース
21/2/19(金)
新宿武蔵野館
冒頭、駅のホームで偶然出会う女子高生ミラ(エリザ・スカンレン)とタトゥーだらけの不良青年モーゼス(トビー・ウォレス)。 よくある青春映画になるかと思いきや、物語は予想とはちがう別の方向に進んでいく。とにかく登場人物たちが、情緒不安定で苛立っている。ミラとモーゼスばかりでなく、ミラの両親(エシー・デイヴィス&ベン・メンデルソーン)のうち、母親は抗うつ剤と抗不安定剤を常用し、精神科医の父親も困惑するばかり。実は、ミラは末期がんの闘病中で、自分を特別扱いにせずに接してくれるモーゼスに惹かれるが、その恋は、やがて衝撃的な結末に辿りつく。シャノン・マーフィ監督は、ありきたりの難病ものを敢然と拒否し、広角レンズで長回しという手法を駆使し、状況全体を捉えようとする。即物的な描写が、人物の心理を浮き彫りにして、成功しているのだ。
21/2/15(月)