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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています
相田 冬二
ライター、ノベライザー
ジョン・F・ドノヴァンの死と生
20/3/13(金)
新宿ピカデリー
中学生から高校生にかけて文通していた。 観た映画について聴いた音楽についていろいろなことを綴っていた。 ひとりは同い年の女性。もうひとりは少し年上の女性だった。 どちらのひとにも逢ったことはない。 手紙は自分が現在の仕事をする上で原点になった。 自分の近況を伝えるということは、自分の感動を表現するということは、お互いの感性や価値観を共有することだった。 この映画は、ある若手スターと文通していた少年の長い物語だ。 雲の上の存在と手紙を通してやりとりすること。 かけがえのない親密な関係性とその行方が、胸に沁み入るように描かれる。 直筆の手紙は物質だ。 わたしの手紙はあなたの許にしか残らない。 あなたの手紙もわたしの許にしか残らない。 こころを渡す。 こころを受けとる。 その繰り返しが育むものとは。 ここには、その答えがあった。
20/3/9(月)