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水先案内人のおすすめ

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インディペンデント、自主映画、ドキュメンタリー、映画祭、特集上映などを中心に

水上 賢治

映画ライター

作兵衛さんと日本を掘る

本作が焦点を当てている山本作兵衛は、福岡県の筑豊炭田で幼いころから働いた炭坑夫。炭坑での生活や労働を子孫に伝えようと彼は60歳にして独学で絵画をかきはじめ、日記を残した。そうして残した2000枚ともいわれる記録画と日記は、のちに日本初のユネスコ世界記憶遺産に登録されることになる。いわば名もなき偉人といえる作兵衛の功績と人生をメインに本作はたどっている。 ただ、偉人の歩みと肖像を紹介する単なる人間ドキュメントと本作はひと味違う。というのも山本作兵衛の人生、人柄、炭坑といったキーワードは現代の日本にもつながっている。そう思えるほど、実に多くのテーマであり、現在の日本社会で改めて考えるべき問題が次々に浮かび上がる。 それは日本社会の根底からずっと消えることのない差別、地域格差、エネルギー政策、最終的に弱き者が虐げられていく国策の罪などなど。どこかしら今の社会でわたしたちが薄々感じながらも、どこか目をつぶってやりすごそうとしている問題に直面することになる。 手がけた熊谷博子がタイトルの『日本を掘る』という言葉に込めた意味とは? このことについてしっかりと考える機会にしたい。

19/5/20(月)

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