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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も
植草 信和
1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
国家が破産する日
19/11/8(金)
シネマート新宿
日韓国交はギクシャクしているが、相変わらず“外れなし”の好調な韓国映画。本作は1997年に実際に起こった韓国の通貨危機をもとに、史上最悪の国難に立ち向かった人々と、嵐にもまれながらも必死に生きようともがく韓国国民の姿を描いている。本国では公開後一カ月で300万人以上を動員、大ヒットとなったという。 何とかしてデフォルトを阻止しようとする韓国銀行の女性通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)、いち早く国家の経済危機を察知して危機をチャンスにしてしようとするユン・ジョンハク(ユ・アイン)、家族と社員を守るために苦しむ町工場経営者のガプス(ホ・ジュノ)の3人を中心にストーリーが展開。 彼らは架空の人物だが、政府、金融、一般市民という三者三様の立場を代弁、経済の素人には分かりにくい通貨危機を立体的に描いている。 韓国政府が最後の手段としてすがった国際金融秩序を掲げるIMF(国際通貨基金)とのハードな交渉シーンがハイライトで、外国資本による敵対的買収の緩和、従業員を解雇しやすい制度の導入などの厳しい条件を突きつけるIMFのエゴイズムには慄然とさせられる。 監督は『パーフェクト・ボウル 運命を賭けたピン』のチェ・グクヒ。女性通貨政策チーム長シヒョンに扮したキム・ヘスの演技が素晴らしい。彼女の「貧しい者はさらに貧しく失業が日常になる。そんな世の中にはしてはいけない」というセリフが胸を打つパニック・ムービーだ。
19/11/4(月)