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Tak

美術ブロガー

【緊急事態宣言中休館】あやしい絵展

「怖い絵展」の二番煎じかと思いきや、「あやしい絵展」では、先に作品がリストアップされて、そこに展覧会タイトルをつけるという順序を採ったそうです。幕末から昭和初期の退廃的、妖艶、奇怪、神秘的、不可思議といった要素を持っている、単に美しいだけではない作品を集め、それに相応しい簡潔で覚えやすいタイトルとして「あやしい絵展」が選ばれました。 鎌倉、室町の日本美術にもあやしい作品はたくさんありますが、今回は時代を幕末から昭和初期までと絞ることで、漫然とした展示にならず作品が描かれた当時の社会状況や造形の歴史をも読み解ける構成となっています。これまであまり目にしたことのない「あやしい絵」見たさに展覧会へ足を運んだ方も、否が応でも「何故、このような絵がこの時代に描かれたのだろう?」と必ずや考えるはずです。それこそが、この展覧会の奥深さであり一番の見どころであると思います。描かれるにはその時代の声が色濃く反映されているのです。 折しもこの時代、印刷技術の向上や郵便制度改定により美人画の絵葉書やポスターが出回り、大衆的な「美人」のイメージが形成されていきました。絵画の世界でも美人画は人気を博しますが、一方でそうした表面的な「美」への抵抗も現れます。上村松園や北野恒富らは比較的保守的な傾向にありましたが、甲斐庄楠音、島成園、岡本神草などは明らかにカウンターとしての絵画を意図的に描いています。 時間が許せば文学作品などとの関連性もひも解いていくと、ただ「あやしい絵」だけでない別の魅力にも辿り着けそうです。明治、大正は様々な文学が生まれた時代です。そして海外からの影響も大きく受け、価値観も多様化の兆しが見られた時でもあります。「あやしい絵」をキーワードにし、近代日本の美術、文学、歴史そして世相までをも見て取れる奥の深い展覧会です。

21/4/4(日)

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