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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

調査屋マオさんの恋文

大手メーカーから委託を受けて市場調査を行う会社を切り盛りしてきた元企業戦士。戦後、経済成長の一翼を担ったマオさんは認知症を発症した妻を克明に記録しました。市場調査と介護日誌。対象は違っても丁寧に記録することが核心への近道という点では同じです。妻縫子さんは2019年に亡くなりましたが、生前「マオさんと一緒にいるときが一番ほっこりするわ」と語り、一方の夫は「妻のことをなんにも分かっていなかった」と反省の弁。今だからこそ語られるべき愛の記録になっています。 夫婦の間柄も変転があるように、今井いおり監督の撮影も当初はマオさんの自給自足生活が狙いだったのに、家庭不在で迷惑をかけた妻の話ばかりするマオさんに引きずられて、夫婦の映画になったというところがユニークです。 クスッと笑ったり、ジーンとくる会話が多いのもこの作品の特徴です。家族のいる大阪から長期にわたり家庭を離れ働いていた時代に、息子から「父さん、今度はいつ来るの」と言われたのがこたえたというマオさん。一方、特別養護老人ホームに入所した縫子さんを見舞ったある日、夫婦で交わしたやりとり。「今日も帰るんか?」(縫子さん)、「そうや、ごはん食べんとなあ」(マオさん)、「どこの家に帰るんや」「縫子の家や」「うちも早く帰りたいわ」「そうしような」 東京ドキュメンタリー映画祭2019グランプリ。

20/12/16(水)

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