阪神・淡路大震災で不幸にも肉親を失った人間について語った映画ではある。ただ、あくまで静謐に淡々と、時に少しの笑みを携えながら語られる物語は、震災の悲劇を超えて、ひとりのかけがえのない命を失った人間の悲しみとその後の“生”を届ける。 人生においてほんの一瞬ながら永遠に消すことのできない不幸もあれば、一瞬にして消えてしまい、永遠に取り戻せない幸福もある。それを受けとめて歩を進める人間の姿を本作は優しく描き出す。 悲しみの十字架を背負い、生きることを問う夫婦に扮したのは、関西演劇界で活躍し今回が映画初主演の武田暁と、バイプレイヤーとして数々の映画に出演する河屋秀俊。ふたりの演技も味わい深い。

20/8/13(木)