原作のコミックもテレビアニメ版も見ていなかったし、事前に資料に目を通さなかったので、『1999年の夏休み』のような西洋風の世界観で描く青春ファンタジーだと勝手に思っていた。だが、同じファンタジーでも、孤児たちが平和に暮らす楽園のような孤児院は実は“鬼に献上する食用児を育てる農園だった！”という、『サスペリア』寄りのダークファンタジーだったのでビックリ！ しかも、真実が明かされる導入部から、それに気づいた3人の孤児と彼らの監視役=イザベラとの頭脳バトル、スリリングな脱出劇まで無駄なくスピーディに描かれていたので思わず前のめりに。戸惑うことなくその世界に没入できたもうひとつの要因は、3人の孤児に扮した主演の浜辺美波を始め、『万引き家族』の城桧吏、『仮面ライダー ジオウ』の板垣李光人といった新世代俳優たちが圧倒的な美しさと卓越した芝居でその世界の住人としてちゃんと生きていたから。その美しさを狂気に変えた、イザベラ役の北川景子もめちゃくちゃ怖い。いろいろな発見がある極上のエンタテインメントだ。

20/12/17(木)