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木谷 節子

アートライター

河鍋暁斎の底力

またまた東京ステーションギャラリーの回し者と言われそうだが、河鍋暁斎の下絵や画稿で構成される本展ばかりは紹介せずにはいられない。何を隠そうワタクシは、ウン十年前、河鍋暁斎で卒論書いて、藝大を卒業したからだ。今でこそ河鍋暁斎といえば、「幕末・明治の巨匠」などと認識されているようだが、当時は日本より欧米での評価の方が断然高かった。明治時代に来日して暁斎と交流した外国人たちが自国に持ち帰って美術館に収めた作品を、現代までしっかり評価し続けてくれたからである。そんな海外のコレクターが、本画(彩色された完成品)と同じぐらいに賞賛しているのが、暁斎の下絵だ。なぜなら熟考の末に確定した線をトレースして描く本画とは違い、下絵には、作者の迷いや試行錯誤の跡、また様々なアイデアを描いた生きた線が、自由奔放、縦横無尽に走っている。白い胡粉で修正し、上から紙を貼っては何度も線が引かれた暁斎の下絵は、ほとんどカオスな状態なものも! しかし、その勢い、その生々しさが魅力的なのだ。暁斎が絵を描く過程を知ることができると同時に、彼の際立つ「上手さ」を、本当に実感できるに違いない。

20/11/15(日)

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