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水先案内人のおすすめ

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テレビプロデューサー テレビは見ずに演劇、映画、コンサートばかり足を運んでいる

波多野 健

1954年生まれ プロデューサー(イースト・エンタテインメント)

アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン

スティーリー・ダンが『Hey Nineteen』で「Queen of Soul」と呼んだアレサ・フランクリン。(本当は「アリサ」と発音するのがいいらしい(「シュープリームス」も「スプリームス」とアメリカ人は発音している)。惜しくも2018年にその生涯を閉じてしまったが、未だに彼女のものすごいボーカルは数多く残されている。映像もたくさんあるが、これは彼女が29歳の時に教会でゴスペルを歌った貴重なフィルム。シドニー・ポラックが監督&撮影をしていたが(実際に中に彼がカメラを持っているシーンがいくつか見られる)、何と、「カチンコ」を入れていなかったためにシンクロがとれなくて編集できなかったという嘘のような事実から長い間お蔵入りしていたのがやっと日の目を見られたという。そんなことがあるんだね。何とかやればなったと思うんだけど、ポラックが面倒くさくなっちゃったのかな。僕にも、頼まれて3カメで結婚式を撮影したんだけど面倒くさくて1年間ほっておいたら、ふたりがすぐに離婚しちゃって結局つながなかったという過去がある。 映画に戻るが、内容はやはり素晴らしい。アリサ(あえてこう書くが)は晩年まで歌声は衰えなかったが、何といっても29歳。ものすごい歌唱である。ただ、通常のステージと違うのは、彼女が生まれ育った教会=ゴスペルという場なので、終始笑みはほとんどなく、どちらかというと硬い表情をしていること。唯一それがほぐれたのが、父親が登場してスピーチをした瞬間。父C・L・フランクリンは有名な教会の牧師で、母はゴスペルシンガーであった。両親はアリサが幼い頃に別居して、彼女は父親に育てられた。その父が「この私の娘は、ただの娘じゃない。すごいボーカリストだ」とほめた瞬間にアリサにうれしそうな表情が表れた。バック・ミュージシャンもすごい。バーナード・パーディーのドラムスにチャック・レイニーのベース、コーネル・デュプリーのギターという…。ああ、見たかったな、生で。会場にはミック・ジャガーとチャーリー・ワッツも来ていた。彼らも29歳のアリサを見たかったんだろうな。すごく、お薦めです。

21/5/5(水)

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