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テレビプロデューサー テレビは見ずに演劇、映画、コンサートばかり足を運んでいる
波多野 健
1954年生まれ プロデューサー(イースト・エンタテインメント)
やっぱり契約破棄していいですか!?
19/8/30(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
人生をはかなんで自殺しようという小説家志望の若者と、「ノルマ」が達成できなくてあせっている引退間近の殺し屋という組合せのコメディ。この、「殺し屋が組合に入っていて引退を迫られている」という設定もおかしいが、一番おもしろかったのはこの殺し屋と妻とのシーン。男が家に帰ってくると妻は、まるで夫が殺し屋であることを知らないかのように、これから参加する「編み物コンテスト」の話題を盛んにしかけてくる。この殺すか殺されるかというひっ迫した状況と、妻ののんきぶりのコントラストが実にいい。本来は主人公の若者と、彼が出会う女性編集者との恋路のほうに注目すべきなのだが、僕はずっとこの夫婦の関係性ばかり見ていてすごく楽しかった。落ち目の殺し屋を演じているのは『フル・モンティ』などで知られるトム・ウィルキンソンで、なかなか味わい深かったのだが、一番よかったのは妻役のマリオン・ベイリー。『ターナー、光に愛を求めて』でロンドン映画批評家協会賞の最優秀助演女優賞をとっているだけあって、この人はうまいなと思った。ちょっと、お薦めです。
19/8/28(水)