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吉田 伊知郎

1978年生まれ 映画評論家

驚異のドキュメント 中島貞夫ニッポンをえぐる!1969-1973(レイトショー)

『驚異のドキュメント 日本浴場物語』 (7/28〜8/10) ラピュタ阿佐ヶ谷  特集「驚異のドキュメント 中島貞夫ニッポンをえぐる!1969-1973」(7/20〜8/26)で上映 『驚異のドキュメント 日本浴場物語』(1971)は、ここ15年ほどの間に断続的にニュープリントが作られた中島貞夫の一連のドキュメンタリー作品からも漏れていたために、DVD以外では長らく観ることが叶わなかった幻の1本だ。今回は待望のニュープリント上映。政治の季節が終わりを迎え、万博に浮かれながら、ぬるま湯につかったように緩みきった1971年のニッポンを、全国の珍しい風呂を通して描く(!)怪作である。 ほとんど思いつきのいい加減な企画に思えるが、中島貞夫は本作の前に、全国各地の女性たちのお国柄とアッチの特徴を殿山泰司が長年の実地研究と偏見で記した『日本女地図』を映画化する企画を立てていた。そこではドキュメントとドラマの融合を目論み、脚本も書き上げていたが、当時の製作本部長・岡田茂からの反対で頓挫していた。その後でオファーされた“温泉ものドキュメンタリー”で、中島は『日本女地図』の要素も盛り込み、全国の温泉を旅する男が、母の胎内に風呂の原点を見出すという物語を作り出し、ドキュメントとかけ合わせた。 それにしても、本作に登場する温泉が凄い。男根を抱いて風呂に入れば子宝に恵まれる風呂やら、ロープウェイの中が風呂桶になっている空中風呂など、今でもあるなら一度は行ってみたいと思わせる珍風呂が次々に登場する。 もちろん生真面目に撮ってばかりいるわけでもない。風呂つながりで当然のようにトルコ風呂も登場して、トルコ嬢のドキュメントへと広がりを見せるあたりは見世物的な要素を意図的に盛り込んでいることがうかがえるが、中島貞夫が次の『セックスドキュメント 性倒錯の世界』(1971)で性の世界へと本格的に足を踏み入れていくことを思えば、母胎からさらにその根源の性へと興味が向かうのは必然でもあったのだろう。

19/7/25(木)

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