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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

鬼手

囲碁の映画といえば台湾のチャン・チェンが昭和の天才棋士である呉清源に扮した『呉清源 極みの棋譜』が思い出されます。彼のストイックに対局する映像と共に「碁の神様」とも呼ばれた棋士の知られざる半生を美しく描いた作品のイメージから囲碁は静かなる頭脳競技と思っていました。ところが碁石が碁盤に置かれる際のパチッという小さな音すらも聞こえる静まり返った戦いにバトルの要素を盛り込んだのが本作なんです。真剣勝負の対局にどろどろした怨念を持ち込んだだけでなく、碁盤の外でも命がけの格闘技を展開し、「静」の囲碁と「動」のアクションを組み合わせた前代未聞ともいえる韓国ノワールが誕生しました。 父が自ら命を絶ち母にも捨てられた少年グィスは最愛の姉までも失ってしまいます。もう 地獄のような現実を前にして、彼が生き抜く唯一の道は、父から伝授されていた囲碁を極めることしか残されていませんでした。 偶然その才能を一匹狼の棋士に見込まれたグィスは数年にわたる山寺での猛特訓を経て潜在能力を開花させます。やがてたくましい青年に成長した彼は裏社会の一癖も二癖もあるプロ棋士たちを次々と退け、とうとう姉を自殺に追いやった冷酷な棋士ファン・ドギョンへの復讐を果たすべく、 人生のすべてをかけた最後の闘いに向かうのでした。 秘めた熱い心を激しいバイオレンスで一気に奔出させるかと思うと、沈着冷静に考え抜き動じない心を持つ男。この静と動が交差する難しい役どころをクォン・サンウが鋼のように鍛え上げた体と目力で怪演していきます。また猛スピードで列車が迫ってくる鉄橋上での命がけの対決やプロの棋士100人との同時対局といった奇想天外な展開の妙も合わさって、観客は一瞬たりとも気を休めることはできないでしょう。 それにしても全く別世界のように見えた囲碁と激しいアクションが一体となったように見える展開。リ・ゴン監督のとった「鬼手」(きしゅ=囲碁や将棋で相手の意表を突く奇抜な手)は上手く決まったようです。

20/8/5(水)

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