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夏目 深雪
著述・編集業
存在のない子供たち
19/7/20(土)
シネスイッチ銀座
レバノンの女性監督、ナディーン・ラバキーの新作。中東の貧民窟に生まれたゼインは両親が出生届を出さなかったばかりに、学校も行かずに路上で物を売るなど朝から晩まで働きづめ。妹が11歳で強制結婚させられた怒りからゼインは家出し、不法労働で働くエチオピア移民の女性のもとに身を寄せるが……。 目に飛び込んでくるのは驚くしかない中東の貧困の現実だが、家出後、自分より幼い子の命を守る立場になったゼインが、日銭を稼き出す方法など逞しさにも目を見張った。役者は実際に貧困や不法労働など役と同じ立場にいる者がほとんどだそうで、そのリアリティと、監督の現実を暴き出し、社会を変えたいという冷徹な意志が産み出した傑作といえよう。
19/7/15(月)