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恩田 泰子
映画記者(読売新聞)
君が世界のはじまり
20/7/31(金)
テアトル新宿
この映画に出てくる高校生たちはたんたんと生きているようで、爆発しそうな思いを抱えている。大阪のはしっこの「とある町」。どうしたら、今、ここから抜け出せるのか。ひりひりする思いが、ブルーハーツの歌と一緒に流れ出す。 冒頭、映し出されるのは、ある事件が起きた夜。その後、映画の時間は数週間前に遡り、その夜に向かって進んでいく。追いついたところでおしまいかと思いきや、登場人物は、夜を追い越して、さらにその先へ。映画の主眼は、謎解きではなく、疾走する青春を描くことなのだ。 監督のふくだももこによる2本の短編小説を再構築した向井康介の脚本、そして、物語の強度を高める宮島竜治の編集に支えられてこの映画は夜を越える。間違いなく、今年必見の作品のひとつ。
20/7/28(火)