なんてタイムリーなんだ！ 新しい内閣総理大臣の誕生とほぼ同時期に公開される本作は、原田マハの小説『総理の夫 First Gentleman』を映画化した政界コメディ。ハリウッドでは大統領のそっくりさんが最高責任者の職を任される『デーヴ』を始め、政界が舞台の映画がたくさん作られているけど、日本ではこの手のコメディ映画は近年ほとんどなかったから、そこに鉱脈を見つけた製作陣は素晴らしい。だって、政界には一般人が知ることのない鉄の掟（ルール）があるだろうし、人間関係も特殊に違いない。そこが単純に興味深いではないか！？ しかも、今作は日本初の女性の総理大臣が誕生するストーリー。果たして古くからの慣例がある政界で、女性が総理になったらどんな問題や障害、軋轢が生まれるのか？ その夫の生活はどうなってしまうのか？ この映画は、そこを絶妙なユーモアでシミュレートするのだから目が離せない。中谷美紀が表に出るときは総理としての威厳をまといながら凛と立ち、旦那とふたりきりになったときは何とも可愛らしい表情をのぞかせるヒロインをまんまと体現。田中圭が持ち前の柔和なキャラで腰の引けた夫に徹し、原作とは違う映画ならではのクライマックスをより際立たせている点にも注目したい。

21/9/21(火)