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水先案内人のおすすめ

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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

鵞鳥湖の夜

誰も観たことのないフィルム・ノワールを撮ってみせる、『鵞鳥湖の夜』には全篇からそんな強烈な野心がみなぎっている。少なからぬ犯罪映画がそうであるように、筋立てはシンプルだ。再び望まぬ殺人に手を染めてしまった男。運命の女との出会い。絶体絶命の中の希望なき逃亡。 それなのに、この映画には現世のものとは思えない超現実的な風景が絶えず広がっている。夜、光るシューズを履いて体操をする人々は夢幻を生きているかのようだ。白くて縁の広い帽子が“制服”であるボートの娼婦たちは、客と湖中で体をまさぐり合う。そして、その物語世界を大きく包み込んでいるのが安っぽいネオンの光だ。デジタル時代のネオンの色は私たちの目に刺さってくるかのようだ。 いろんな監督たちの名が思い浮かんでは消えるが、例えばこの街の異様なたたずまいには、レオス・カラックスの野心そのものであった『ホーリー・モータース』を想起した。“スタイリッシュ”であることは、しばしば危険を伴う。だがここには次世代の映画を切り開く意志としての、武器としての“スタイリッシュ”がある。次は中国映画の時代か。

20/9/21(月)

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