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水先案内人のおすすめ

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話題作、アート系作品を中心に

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

ビーチ・バム まじめに不真面目

こ、これは……。映画作家ハーモニー・コリンは、2012年の『スプリング・ブレイカーズ』で一皮むけたと思ったら、この映画でまた一皮むけた。一見ぐにゃぐにゃなのだけれど、それは皮がむけたてだから!   フロリダの陽光の下、描かれるのは、マシュー・マコノヒーが演じる酔いどれ詩人ムーンドッグの酒とクスリの日々。過去の名声と、大金持ちの妻のおかげで毎日やりたい放題だったのだけれども、ある日を境に文無しに。名作を書けば、元の暮らしが手に入るはずなのだけれど。 途中まではよくある転落のドラマのように見えるが、さにあらず。落ちても、落ちても、この男は改心などしないし、それでなんとかなるどころか、全部うまくいく。えー! 途中までは全然納得いかないが、だんだん愉快になってくるのは、私たちを縛る「常識」をラストの大花火に至るまで、徹頭徹尾ひっくり返してくれるから。たった一つ、「愛」だけは揺るがないけれど。 コリンは、おっさんになっても、恐るべき子供。「ガンモ」を撮った20代はじめ、「僕は映画を撮るために生まれた。だれも見たことがない映画を作る」と語っていたけれど、その言葉を見事にまっとうしようとし続けようとしている。

21/4/24(土)

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