「サタンタンゴ」。なんとぞくぞくさせる題名だろう。この、あたかも50年代に撮られたかのようなタル・ベーラ監督のモノクロ映画が、94年に作られたハンガリー映画で、7時間18分の大作と知ったら驚くだろうか。きっとそれだけで引く人は多いのかもしれないが、こう考えてほしい。人生の中で“たった”7時間強を割くことで、もしも一生忘れられないような感動を得るとしたら。否、極力大袈裟な表現は避けるにしても、映画館でこの映画を観るという体験は、これまでにないものになるはずだ。 別にトイレに行きたくなったら途中で立てばいいし、7時間かしこまって座っている必要はない。そうやって気軽な気持ちで入って、しかし観始めたらこの奇妙で不吉な黙示録的世界観に吸い込まれる、という次第。この映画に多くの説明は必要ない。とにかく観て欲しい。

19/9/15(日)