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水先案内人のおすすめ

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テレビプロデューサー テレビは見ずに演劇、映画、コンサートばかり足を運んでいる

波多野 健

1954年生まれ プロデューサー(イースト・エンタテインメント)

ペトラは静かに対峙する

とても明るい陽光の元に繰り広げられる父親と子をめぐる悲劇である。多分ギリシャ悲劇を意識して作られていると思うが、まず冒頭から「第2章」と出てすごく戸惑う。以前映画館で、映写師がフィルムの「巻」を間違えて掛けてしまい、上映が途中で止まってしまった経験があったが、デジタル時代にそんなことがあるのか、と思うようような唐突な導入だった。実はこれは、作り手が意図的に時系列を入れ替えて見せているのだということが次第にわかってくる。それとともに、ほとんど1シーン1カットではないかと思えるくらいに、ゆったりとロングショットが左右に動いていく。そして登場人物が画面の外に消えても、そのカットはなかなか終わらない。いったいこれは何を見せられているのか?しかし不思議なことに不快ではない。スペインのジローナというとても美しい風景が、そのストレスを癒してくれる。このロケ地に広大な土地を持つジョアン・ボティという初老の男性が、映画初出演ながら(全くそうは思えない!)スノッブでひどい性格の芸術家の役を見事に演じている。途中までは、「嫌な話だな」と思いながら観ていたのだが、観終わった時の読後感は「ひとつの傑作を観た」というところまで変わっていた。すごくお薦めです。

19/6/25(火)

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