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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり
紀平 重成
1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)
人生の運転手(ドライバー)~明るい未来に進む路~
21/10/1(金)
シネマカリテ
仕事は楽しいし、真面目な彼との恋愛もうまくいっていると思っていたソック(イヴァナ・ウォン)は、ある女性が登場することで失恋に失業、失意に追い込まれるという「三失」の状態に。多種多様な恋愛物語を得意とするパトリック・コン監督の本作はどん底状態から何とか這い上がろうとする笑いあり、涙ありの復活物語です。もちろんその解釈で十分に楽しめますが、バス運転手の仕事を見つけたソックに先輩が「人生はバスに乗ることと似ている。乗り間違えても正しいバスに乗ればいい。心配ない。必ず目的地に着く」と助言すると、今のような香港の事情ですから別の意味でも読めてしまうのではないでしょうか。 まあ、解釈は人それぞれですが、本作は2020年11月に香港で公開されコロナ禍のため1週間で公開中止に。しかし再上映を望む声に押され21年2月に再上映されました。まるで今の香港市民を励ます応援歌のような作品です。
21/10/2(土)