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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

あの頃。

「大好きだぁ〜!」と叫んだ後の曇りなき瞳、やっと好きな人と会話ができ、握手ができた喜びを忘れたくないから自分の手を握るしめる仕草。ライブ会場、イベント会場は、人を幸せにし、明日を生きる希望へと繋がる大切な居場所。この映画はハロプロ推し、アイドル推しじゃなかろうと人々の胸を熱くする。だって大人になったら家族以外の居場所を探し、自分の存在意義を高めていく私たち人間の“居場所”探しの物語なのだから。 真っ直ぐに愛を叫ぶ彼らはみんな嬉しそうで、誰のためでもなく、自分たちの喜びのために集まって何かを生み出し続ける。松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人という面白いくらい演技が上手い役者陣に、芸人のコカドケンタロウがプラスされ、時々、心を痛めつけ合うほどの口喧嘩が勃発する。それもまた真っ直ぐに生き過ぎているからなのかもしれない。 劔樹人氏の原作を、自身も監督をする冨永昌敬氏がそれぞれの感情を浮き彫りにしたリリカルな脚本を紡ぎ、今泉力哉監督が、愛に夢中で自分の生き方自身も拗らせ模索する男たちをチャーミングに画に焼きつけた傑作。 どう見てもイヤな男を演じる仲野太賀氏と、優しそうな顔をして罠を仕掛ける主人公を演じる松坂桃李氏の、“本当は良い人なのかもしれない”と思えるキャラクター構築は、このふたりの佇まいだから感じられるギミック。それがキャスティングの力なんだと実感したやたらと笑って、意外なところでも泣いてしまった魔法の映画。

21/2/16(火)

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