権力を監視するジャーナリズムと、政権を維持するために様々な情報をコントロールする立場のエリート官僚。両者が交叉し、誰が見ても思い当たる現在進行形の政治事件をモデルにして、緊迫したドラマが生まれた。アメリカ映画では珍しくない政治サスペンスだが、近年の日本映画では稀な成功例といえるのが、この『新聞記者』だろう。東京新聞・望月衣塑子記者の同名ベストセラーを原作に、「父は日本人、母は韓国人、育ちはアメリカ」という若手新聞記者のヒロインを演じるのは、韓国の女優、シム・ウンギョン。全篇、日本語の芝居にも全く違和感がない。理想と現実の間で葛藤する官僚・杉原役は、松坂桃李。もう少しユーモアが加味されていれば厚みが出たのにというのは、見当はずれの注文だろうが、それでも藤井道人監督の健闘は十分賞賛に値する。こういう作品が、もっと出てくれば日本映画の裾野は確実に広がり進化する。

19/6/24(月)