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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

すばらしき世界

西川美和監督の新作を前にすると映画的感興を抑えることができない。それは、30数年前のホウ・シャオシェン、現代のポン・ジュノの新作に接する時の感覚に似ている。今度はどのような物語を紡ぎ、どんな世界を現出させているのだろうか、と。だから事前情報に耳をふさいできた新作『すばらしき世界』。 前作『永い言い訳』から5年、長編6作品がすべてオリジナル脚本だったのに対して、初めての“原作あり”の本作。原作となった佐木隆三のノンフィクション小説『身分帳』は未読だが、実在の人物をモデルとした主人公・三上の数奇な人生を通して、人間の裏と表、社会の光と影をあぶり出す〈西川美和映画〉になっている。 刑務所から出所した“元殺人犯”の三上正夫(役所広司)は、身元引受人の弁護士庄司(橋爪功)に迎えられる。その頃、テレビ・ディレクターの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は前科者の三上が社会に復帰し、生き別れた母親と涙ながらに再会するといういかにもテレビ的なストーリーをドキュメンタリー番組に仕立てようとしていた。 怒りに駆られて殺人をも犯す反社会的人間だが、他人の苦境を見過ごせない正義感の持ち主でもある三上が更生しようとしている現代社会は、本当に“すばらしき世界”なのか。名カメラマン笠松則通のアングルと西川の演出は、人間社会の矛盾を観客に突きつける。第56回シカゴ国際映画祭にて作品が観客賞を、役所が最優秀演技賞を受賞。早くも本年最高の作品になるだろうと予感させる傑作だ。

21/2/7(日)

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