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演劇鑑賞年間300本、記者歴40年のベテラン

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

NODA・MAP番外公演 『THE BEE』

9年ぶりの国内上演となる野田秀樹・演出『THE BEE』は野田の代表作であり、演劇界で異色の傑作なのに異論はないだろう。2007年の日本初演を体感した時の衝撃は今だに忘れられない。目に、脳裏に焼き付いている。 暴力の連鎖を断つ、という、いわば当然の当たり前の理論だが、では、演劇はどのように表現するのか。アジテーション演劇の容態ではなく、ドラマとして観客の前にどう提示するか。それが、どの程度、伝え切れるのか。『THE BEE』は答えの一つの典型を出してくれた。 脱獄囚・小古呂に妻子を人質に取られたサラリーマンの井戸が「被害者」から「加害者」へと変容していき、徐々にエスカレートしていく。その暴力の果てに子供の指を一本一本折っていく。そのゾクッとする恐ろしさ。その先に起きる意外な出来事。野田が小古呂の妻を演じ、キャサリン・ハンターが井戸を減じた英語上演が素晴らしい舞台だった。阿部サダヲが井戸、長澤まさみが小古呂の妻、河内大和が警部など3役、川平慈英が小古呂など4役。 目には目を、歯には歯を一。犯罪被害者の立場になると、例えば死刑制度を肯定する意見が理解できるだろう。だが、復讐の連鎖を考える刺激的な演劇だ。

21/10/22(金)

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