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樋口 尚文
1962年生まれ 映画監督、映画評論家
すばらしき世界
21/2/11(木)
TOHOシネマズ日比谷
『ヤクザと家族』も然りであったが、本作も更生を志す元「反社」の人間を、永遠に過去のレッテルのもとに排除し潰そうとする監視社会の「圧」を(そしてそうした差別に折れてまた暗黒面に走りがちなアウトローたちの脆さも含めて)描き出して息苦しい。『うなぎ』の確信犯の出所者とはまた違う弱さ、ダメさ加減を演じてハラハラさせる役所広司が出色。そしてこの男にとことん踏み込んで取材せよとけしかける長澤まさみの番組プロデューサーが、仲野太賀が好演するディレクターの「正義」のヤワさ加減をどついてみせる凄みも印象的。単線的なきれいごとの「社会派」に終わらせない西川美和の凝視ぶりは、まるでケン・ローチの映画のような後味であった。
21/2/12(金)