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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

プレーム兄貴、王になる(『プレーム兄貴、お城へ行く』)

なんだかインド映画らしくないタイトルですが、本作にはボリウッド映画の底力を見せつける要素がてんこ盛りです。まずは「3大カーン」の一人であるサルマン・カーンについて触れましょう。 昨年日本公開された『バジュランギおじさんと、小さな迷子』との共通点。どちらも主演を務めただけでなく、下町のお人好しで熱血漢、壊れた人間関係を修復していくという“愛の伝道師”的な役回りもそのまんま。ただし迷子の幼子を対立する隣国へ送り届けるという内容の『バジュランギおじさん……』と、王位継承争いの暗殺事件で意識不明となった王の替え玉として、もめ事の解決を買って出るという本作とは題材が全く別物なのに、主人公の純真な心に共感してしまうところは同じです。 どちらも2015年の制作。『バジュランギおじさん……』がインドの国内2位、本作は3位と共に大ヒットしているところも似ていますね。この年はまさにマッチョだけではないサルマン・カーンの新しい魅力が開花する年だったということでしょう。ちなみに1位は『バーフバリ 伝説誕生』。 もちろん本作の大ヒットの背景にはサルマン人気以外の要素もありました。それは7シーンで繰り広げられる圧倒的な歌とダンス。その分上映時間は164分と長くなりますが、喜怒哀楽の感情が怒涛のように押し寄せる至福の時間に身をまかせていると、「やっぱりボリウッドはこれでなくちゃ」と元気が湧いてきます。社会問題を扱う作品の増加やCG、アクション重視の流れが進む中、あえてインド映画の原点回帰と思われる作品のヒットは今後の動向を見る上で無視できません。 最後の最後でどんでん返しがあることも魅力の一つとして挙げておきましょう。またチャウ・シンチーの『少林サッカー』へのオマージュともいえる場面も巧みに挿入され、スーラジ・バルジャーティヤ監督はうまい使い方をするなと感心しました。さらに『パッドマン 5億人の女性を救った男』のソーナム・カプールを魅力的に描いているところも気に入りました。インド映画の新しい魅力をどうぞお楽しみください。

20/2/17(月)

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